ご挨拶

長崎大学 中村典生

2023年度より会長を拝命致しました長崎大学の中村典生と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。ようやく私の職場でも、本年度よりマスク着用が任意となり、対面授業も以前と同様に大人数で行えるようになりました。長いコロナ禍がようやく落ち着き、少しずつ日常が戻りつつあります。

しかし、このコロナ禍の中で社会構造自体が大きく変化してしまいました。そして新学習指導要領の全面実施年度がちょうどコロナ禍の始まりと重なったこともあり、小学校英語教育についても同様に大きな変化が起きました。GIGAスクール構想による一人一台端末の実現、学習者用デジタル教科書の活用開始、オンラインを活用した授業、そして教科担任制の実施等々です。そしてそうこうしているうちに次の学習指導要領の改訂もそう遠くない未来に始まることが予想されます。こんな状況下、小学校英語教育学会(JES)はどんな方向を目指すべきなのでしょうか。

本学会の特長は研究者と実践家がかなり近い割合で在籍しているということです。これは他学会にはない大きな強みです。しかし一方で、この「良さ」がまだ十分には生かし切れていない気もしています。そこでまず、今年度より共同研究委員会という新たな委員会を立ち上げることと致しました。これは各ブロック単位で大学教員等の研究者と小・中学校の現場の先生方がともに、児童のための研究を進めることをサポートする委員会です。少しではありますが研究費も補助致します。ただ、仰々しく研究・研究というより、児童の学びを中心に据えた上で、現場のニーズや困り感を把握し、それに対処する方策を研究者と実践家が協働して練り、実践してみる。そんなことを目指して行こうと考えています。実践は実践、研究は研究と二分するのではなく、研究者と実践家が一緒になって課題を解決しようとします。こうすることで、本学会が掲げる理論と実践への寄与という大きな目標を達成することを実現したいと思っています。会員の皆様方にはきっと一緒にやろうと声がかかることもあると思います。もちろん自らやろうと立候補していただくことも大歓迎です。新しい共同研究委員会、どうぞ活用して下さい。

また、学会は本来教育の潮流を作り出す役目があります。新しい学習指導要領がどのような方針となるのかを手をこまねいて待つのではなく、自らその方針を作るための一翼を担うことができるようにしなければなりません。そのために、これまでの小学校英語教育の成果と課題をしっかり把握しつつ、それを踏まえて学習指導要領そのものについてはもちろん、教員養成・研修の問題、コア・カリキュラムの問題、教員免許の問題、ICT活用の問題など様々な問題についても、学会の課題研究や大会のシンポジウムなどで取り組んでいく必要があるでしょう。

いずれにしても、以上のようなことは会員一人でできることではありません。1000人近い本学会員が一緒になって作り出さなければならない流れです。本学会が学会員の皆様にとって、小学校英語教育にかかわるすべての方々にとってより頼りになる学会となるよう、一緒に進んで行ければと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。