2024年度小学校英語教育学会九州北部地区英語教育セミナー報告

2025年2月15日(土)13:00~16:30

〇受付
〇開会行事
〇ワークショップ 内田綾先生(春日市春日南小学校教諭・次年度JES福岡県理事)

「学習者用デジタル教科書を体験しよう~これからの授業での活用に向けて~」

小学5年生から中学3年生まで学習者用デジタル教科書が配付されている反面、あまり活用はされていない現状があり、どんな場面での活用が有効かについて報告されました。特に、友好的な点として、音声機能や個に応じた指導、学習支援アプリと併用し、評価に生かせる点などが挙げられました。児童の声としては、使いやすさが91%であり、その理由として、読み上げ機能や音声機能がある、スムーズに内容が見られる、字幕が出る、スクリーンショットが使える、カメラを使い教師に成果物を送ることができるなど、様々に有効活用ができる点が挙げられました。また、会場の先生方が実際にデジタル教科書を体験する時間や、お互いに感想を述べ話し合う時間が設けられ、学習者用デジタル教科書が児童の学習に非常に有用で、今後さらに活用していきたいという声が多く聞かれました。

〇実践発表1 松下大介先生(佐賀大学教育学部付属小学校教諭)

「思考力と創造的な言語使用を高めるSmall Talkの工夫」

外国語指導におけるスモールトークの実践について、言語活動の充実、児童と教師の協働、コミュニケーションをみとる評価など、談話力の育成(一貫性のある対話を構成する能力)について話され、練習機会をできるだけ多く与えることが不可欠であること、児童と一緒に考えを共有すること、また、思考を伴う言語活動の積み重ねや、必要に応じて活用していくことの重要性について発表されました。「じゃんけんコミュニケーション」についてのお話では、子供たちが自発的に英語で質問を考え発話することで、総合的に児童の言語的能力・談話的能力が高まったことが報告されました。質疑応答の時間には、実際に先生同士でじゃんけんコミュニケーションを体験する時間が設けられ、今後の授業に取り入れていきたいという声が多く聞かれました。

〇実践発表2 前田優子先生(長崎県佐世保市立広田小学校教諭)

「国際交流を通した小学校英語教育の実践 ~グローバル化する社会に必要な異文化コミュニケーション能力を身に付ける~」

アメリカンスクールとの国際交流学習を通して、児童が英語の知識と技能を活用することが、もっと英語を話したいという主体的な学びや学習意欲の向上につながり、英語で話す自信につながったことや、新しい発見から視野が広がり、思考を働かせることで深い学びが促されたことについて発表されました。また、普段の授業実践における異文化理解や音声指導についても報告さ入れました。異文化と自文化の比較を通して、グローバル社会の多様性に気づき、違いを知って認めるという寛容性の育成に焦点を当てながら、音声の習得や意味の習得を目指したことについて説明されました。また、佐世保市教育委員会と連携して取り組まれている「Sasebo Global kids」について、市内の6年生を対象に、英語圏文化を画像で紹介し、英語で発問を工夫しながら、児童たちの思考と発話を促し、英語圏の人たちと交流しながら、体験的に理解を深められる教育の実践について報告されました。

〇小学校外国語教育についての座談会

様々な質問について先生方と討論する中で、デジタル教科書について「どんな機能があると現場が助かるのか」や「異文化理解」などについて、様々な質問が出されました。デジタル教科書については、単語レベルで分かる読み上げ機能や単語の並べ替えを読み換えてくれる機能、言えない表現や単語を方略的能力を使って表現する機能など様々な意見が出されました。また、異文化理解については、言語と文化は切り離せないものであり、ゴールでもありツールでもあるという話になりました。セミナー後のアンケートでは、実践研究のヒントを得ることができ、今後の授業に活用していきたいことや、デジタル教科書の活用を広めたいこと、異文化理解の取り入れ方や、今後は次期学習指導要領を見据えた講話を聞きたい等の様々な意見が聞かれました。また、参加された教科書会社の方からのご意見として、「我々の立場を考慮いただいた話も振っていただくなど、大変ありがたく、とても良い雰囲気のセミナーで、勉強になりました」という意見もいただき、様々な角度からの情報が得られ、温かい雰囲気の中で、考えを深め合う貴重な時間となりました。