2024/11/10(日)小学校英語教育学会(JES)北海道道央支部セミナー ちょこっと報告

北海道道央支部セミナーが11 月10 日(日)、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。セミナーでは、海外の学校との対面交流、文字指導の帯活動パッケージ教材の開発、読解力を育てるための実践、学習者の認知レベルに応じたテーマを基にした授業の提案など、多岐にわたる内容が紹介され,多くの示唆と学びを得られる有意義な研究会となりました。

実践発表
小林芳恵先生
内野駿介先生
西山エリカ先生

小林芳恵先生のご発表では、オンライン交流が海外の小学校の児童との対面交流へと発展するという夢のある実践について、その準備、内容、成果が報告されました。国内での地域間交流を通じて子供たちに見られた好ましい変化をきっかけに、次は海外の小学校との交流を実現したいという指導者の思いから始まった取り組みです。アドバイザーである萬谷先生の協力のもと、台湾の2 つの小学校とのオンライン交流がスタートし、自己紹介や町の紹介などを行ってきました。その後、台湾の交流先の小学校が視察に訪れることとなり、教育委員会の協力も得て、児童同士の対面交流が実現しました。

オンラインでの交流の経験を生かした対面での交流では、言葉を超えた深い心のつながりが生まれ、児童たちの自信や意欲の向上につながった様子が、ビデオ映像や子供たちへのアンケートを通じて報告されました。ICT を活用した海外の小学校との交流は広がりを見せていますが、オンライン交流をきっかけに対面交流へと発展させた事例は非常に貴重で、多くの参考になるものでした。

「JES 共同研究委員会北海道ブロック」からは、英語の文字を読めるようにするための5 分間帯活動パッケージの開発についての報告がありました。このパッケージでは、文字学習の5 段階をスパイラル方式で配列した多彩な学習活動が作成されており、今回はその具体例が数多く紹介されました。どの活動も短時間で児童の興味を引きつける内容となっており、すぐに実践できる、試してみたいと思わせるものでした。

実際に実践された先生からは、授業の導入部分に帯活動として文字指導を取り入れることの有効性が報告されました。一方で、個々の児童へのサポートの必要性や5分という時間の短さといった問題点も指摘され、今後の改善に向けた課題として挙げられていました。英語の文字や発音の基礎をしっかり身につけることは、その後の学習をスムーズに進めるための重要な土台となります。このパッケージ教材がさらに進化し、多くの現場で活用されることが期待されます。

西山エリカ先生からは、授業時数が多い私立小学校で、読解力の向上を目指した英語教育の実践について、その内容と成果を細やかにご報告いただきました。どのような指導を行えば、どのように「読みの力」が身につくのかについて研究を重ね、フォニックスによる文字と音の関係の理解を深める指導を重視するとともに、簡単なレベルのストーリーの音読に継続して取り組み、最終的には黙読から読解へとつなげる実践を展開されました。こうした指導を段階的に行いながら継続する中で、term testを活用して児童の「読み」の進捗状況を丁寧に検証された結果が共有されました。

段階を踏み、繰り返し丁寧に指導することで、学習者に確実に読解力が身につくことを実証した、お手本となる実践でした。こうした実践から得られる示唆は、公教育にも取り入れられる部分があると思います。私学での特別な実践は、公教育においても教育の質を向上させる可能性があり,多くの参考になると感じました。

講 演
湯川笑子先生

今回は、バイリンガル教育を専門とし、長年にわたり小学校英語教育に携わり、多くの現場で実践を重ねてこられた湯川笑子先生をお迎えし、ご講演いただきました。

ご講演では、学習者の認知レベルに応じたテーマを設定し、オーダーメイドの教材を導入することで、児童の学びを豊かにする強力なアプローチについてご提案いただきました。先生ご自身が現場で培った具体的な実践例を交えながらのご提案は、非常に説得力があり、多くの示唆を得ることができました。

テーマ・ベースの授業とは、学習者の認知レベルや既存の知識に基づいたテーマを設定し、児童にとって意味のあるインプットを豊富に与えながら、言語使用と練習活動を組み合わせることで、理解と定着を確実にする指導法です。「住居」「栄養素」といった具体例を示しつつ、テーマの設定方法や教材の作成の考え方や方法、情報収集の手法など、単元作成のヒントを大変参考にさせていただきました。

教科書を使用している公立の学校でも、こうした自作教材を時折取り入れることで、授業がより魅力的になると感じます。そのためには、教師自身が独自のアイデアを持ち、クリエイティブになることが必要だということを、ご講演を通じて改めて感じました。

プログラム
13:05-13:35「台湾の小学校との交流実践:成果と課題」
小林芳恵(苫小牧市立北星小学校)・萬谷隆一(北海道教育大学)
13:35-14:35「小学校外国語活動における文字指導のパッケージ開発プロジェクト」(JES共同研究委員会北海道ブロック発表)
沢田 早生(網走市立潮見小学校)・佐藤 弘美(札幌市立星置東小学校)・平山 伸正(札幌市立宮の森小学校)・徳光 郁乃(札幌市立手稲北小学校)・渡辺 真衣(札幌市立伏見小学校)・内野 駿介(北海道教育大学)
14:45-15:15『田中学園立命館慶祥小学校での読みの指導実践』
西山エリカ(田中学園立命館慶祥小学校英語科主任)、湯川笑子(田中学園立命館慶祥小学校英語科特別顧問)
15:20-15:50『“QA retelling”の診断調査としての効果』
湯川笑子(田中学園立命館慶祥小学校英語科特別顧問) 吉田恒(田中学園立命館慶祥小学校長)
15:55-16:55講演「インプットの豊富な小学校英語授業を目指すには」
田中学園立命館慶祥小学校英語科特別顧問 湯川笑子